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膨大な勉強時間の創造

騒々しい車内では集中が難しいと思いがちですが、むしろ「雑踏の中の孤独」を感じられる車内の方が、集中力が高まるはずです。能楽師の例ですが、自宅の練習よりは、移動中の電車、飛行機などで覚えた方が、謡の暗記ははるかにはかどると言います。家では、どうしてもテンションが下がるそうです。若いころは私も、電車の中やプラットホームでよく勉強した記憶があります。そのとき、夢中になって学んだ四書五経をはじめとする中国古典は、今でもそらんじることができるほどです。暗記科目の復習中心の勉強とはいえ、必要な単語集や例文集、年号や歴史事項の暗唱ガイドなどは、常にバッグに入れて持ち歩く習慣をつけておくべきです。分厚くて携帯に不便な本なら、自分で分冊したり、問題集や参考書などは二冊買って、一冊はハサミで切って覚えやすい形に工夫したりするなど、移動勉強空間の教材を自分で作るのも一考でしょう。通学時の勉強時間は、乗り換えなどで中断され、細切れになるかも知れませんが、塵も積もれば……です。合計すれば、膨大な勉強時間の創造に等しく、学習量も大変なものです。さっそく実践を。

難関校合格者の家庭をのぞく

子育て、中学受験関連の特集を組む雑誌やムックの刊行が続いています。以前と比べると、親世代も人間関係が希薄になっているので、人に聞けない分、こうしたものから情報やヒントを得ようという人が多くなっているのでしょう。こうした雑誌やムックの記事でいちばん読まれているのが、わが子を灘中学や東大など難関校に合格させた家庭のルポ記事だと言います。家族のプロフィール、当人の学習歴、親のサポートぶり、家族の生活の様子などを記述したものです。こうしたものを読むと、ほとんどの家庭が、親の学歴・年収ともに高く、「頭がよくてお金もある家庭の子がやはり受かるのだ」という思いに駆られ、「わが家は到底無理だ」などと思ってしまうようです。が、そうした「のぞき趣味」の部分で納得してしまってはこうした記事を読む意味がないし、むしろ読まない方がいいでしょう。こうしたものから読み取ってほしいことは、わが子を難関校に合格させた家庭は「当たり前のことを、長期間、持続してやり続けた」家庭であるということです。これがどの家庭にも共通している最も根幹的な要素です。規則正しい生活、健康を維持するための食事の工夫、テレビやゲームなどの時間の短縮、家族の会話の充実、いろんな場に子どもを連れて行くなど体験の重視……誰にもできそうなことの積み重ねなのです。が、実際に徹底しようとすると、これらは意外に難しいことでもあります。この徹底ぶりに普通の家庭との差が出ると言えます。勉強は何も学校と塾だけでするものではありません。こうした記事から「どんな教材を使ったの?」「どこの塾に通ったの?」という情報を得る以上に、子どもに地についた能力を付けるには、家庭での日々の過ごし方が大きく影響するということをぜひ読み取っていただきたいものです。

有名大学の某学部

大学では、生きるために本当に役に立つことを身につけることが大切である。そのために努力しなさい。就職、就職とそればかりを考えているから、就職できないと人生に絶望する。最近、就職に悩む大学生の自殺が増えている。私の知っているある有名大学の某学部の四年生の話だ。成績が良くて就職先も決まっていたのだが、飛び降り自殺をした。「もっと良いところに就職したかった」のである。大学で成績が良くても一番大切なものを身につける努力を忘れていた。デモステネスというギリジャ−ローマ時代の大雄弁家がいる。ギリジャ−ローマ時代は雄弁が価値の時代。したがって、彼は歴史上まれに見る大成功者である。でも、彼は最後に自殺をした。マケドニア撃退の演説で失敗したと思ったから。社会的な「成功と失敗」という軸しかない人は、どんなに成功してもどこかで躓く。